フランク・シナトラの肖像と、シナトラ・セレクトのボトル。スタイリッシュなボトルがよく似合う。

【友情】ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)とは

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)とは、テネシーウイスキーJack Daniel’sがフランク・シナトラ生誕100年を祝って製造した限定ウイスキーです。

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)について

フランク・シナトラの肖像と、シナトラ・セレクトのボトル。スタイリッシュなボトルがよく似合う。
フランク・シナトラの肖像と、シナトラ・セレクトのボトル。スタイリッシュなボトルがよく似合う。

Jack Daniel’sとフランク・シナトラの縁は深く、Jack Daniel’sが一介の地酒に過ぎなかった頃から、フランク・シナトラが愛飲していました。

フランク・シナトラはイタリア系の移民でしたが、なぜかイタリアのワインやリキュールではなくJack Daniel’sを愛飲していたそうです。

彼は地方でのコンサートでも、必ず会場にはJack Daniel’sを片手に壇上に立ち、これみよがしにステージにて飲んでいたと言われています。稀代の歌手がひいきにするウイスキーとなれば、広告効果は絶大だったでしょう。

大切に飾られるJack Daniel's Sinatra Selectのボトル
大切に飾られるJack Daniel’s Sinatra Selectのボトル

また公式にファンクラブが存在しないころからも、スーツに勝手にJack Daniel’s Fan Clubと刺繍したりと、よほどJack Daniel’sが好きだったようです。(こうしたお話はJack Daniel’sの運営会社であるブラウンフォーマン社の日本支部の方からおうかがいしました。)

現代は、ガンズ・アンド・ローゼスやレッド・ツェッペリンらの活躍によっても、幅広くJack Daniel’sはマーケティングの面で助けられていますが、フランク・シナトラはそうした広告塔的なアーティストの走りであると言えるかもしれません。

なんといっても、フランク・シナトラは今なお伝説として語り継がれる一流の歌手ですから、当時でも絶大な影響力を持っていたことでしょう。

Jack Daniel’sといえば、『セント・オブ・ウーマン – 夢の香り』という映画で、アル・パチーノ扮する主人公が「俺はずっとコイツを飲んでて、古い友だちみたいなもんだから、ジャックじゃなくて、ジョンと呼んでいいんだ」というセリフがありますが、このフランク・シナトラも、Jack Daniel’sのことを友達のように思っていたのではないでしょうか。

そこにきて、このジャック・ダニエル・シナトラ・セレクトのリリースです。これはフランク・シナトラへの、Jack Daniel’sからの友情の証のプレゼントのようなものと言えるでしょう。

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)の香りと味わい

ボトルのアップ。
ボトルのアップ。

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)を口にしたのは、2016-06-26の三越伊勢丹の特設バーステージにて。

会場には、伊勢丹のスタッフだけでなく、有名なバーのバーテンダーや、Jack Daniel’sの会社であるブラウンフォーマン社日本支部の方もいらっしゃいました。製法や工場について、詳しくお話が聞ける素晴らしい企画です。

さて、そこではシナトラ・セレクトはワンショット30mlが2000円で購入できました。決して安い値段ではないですが、ボトルまるごと買うと21,600円ですから、まあ仕方のない値段でしょう。

さて、まず香りは、Jack Daniel’s Old No.7(いわゆるスタンダード銘柄)に比べてバニラ香が強く、甘さが際立っています。バニラ香の後には、ハニー、コーン、メープル、穀物の柔らかい焦げ感。

三越伊勢丹の中に突如現れるJack Daniel'sの特設バー。
三越伊勢丹の中に突如現れるJack Daniel’sの特設バー。

味わいはやはりバーボンらしいオイリーさ、甘さが強いですが、若干の酸味と、マイルドな刺激。やはり特徴的なのはリグニン由来と思われる木の香りで、これはしっかりと感じます。

タンニンの渋みも強めで、味わいはじめのクリーミィな甘さから、フィニッシュの刺激と渋みまで、バランスよくまとまっていると思います。

ただ、ハイエンド銘柄のわりには若干ながら未熟成感も感じました。これは後述する特殊な製法によるのかもしれません。

というのも、シナトラ・セレクトは、樽をトースト、チャーしたのちに内側を縞状に削り取ることで、原酒との接地面積を増やし、樽成分を短期間で一気に抽出させるという、これまでの常識からしたら荒業と呼ぶべき製法が使われています。トーストした後に削るわけですから、当然焼かれていない樽の内側の部分が露出するわけで、よりダイレクトに木の香りが移るわけです。

内側をチャーされた一般的な樽と違い、このシナトラ・セレクト用の樽は縞状に削られている。
内側をチャーされた一般的な樽と違い、このシナトラ・セレクト用の樽は縞状に削られている。

ここで驚いたのが、その「削りかす」をも樽の中にいれて原酒とともに熟成させるということです。ブラウンフォーマン社の方の説明では、縞状に樽の内側を削ることで、樽とウイスキーの接地面積が二倍になる、とのことでしたが、「削りかす」をも樽とすれば、二倍以上の接地面積を原酒に与えることになります。

さらにこの樽は、バレルハウス(樽貯蔵庫)の中でも最上段で熟成させることで熟成を早く、良い状態で進めています。

最上段は、寒暖の差が激しく、それだけ活発に樽が呼吸するので、早く熟成するというわけです。こうした理由から、最上段は「天使の貯蔵庫」と呼ばれるとか。

さて、こうした工程ですが、確かに樽熟成は早まると思います。ただし、この場合にすすむ樽熟成とは、樽成分の溶出が主であって、エタノールと水成分の交合という観点での熟成では、熟成が早まるとは思えません。

Jack Daniel'sに欠かせないチャコール・メローイング(サトウカエデの炭の濾過)工程のレプリカ。実際のものはこれが3メールの高さがある。
Jack Daniel’sに欠かせないチャコール・メローイング(サトウカエデの炭の濾過)工程のレプリカ。実際のものはこれが3メートルの高さがある。

焼酎の好事家が水割りを作るさい、飲む前日から空き瓶に一対一で詰めておき、焼酎と水の混合を進める「前割り」という手法を用いますが、これは樽熟成においても同様です。また、瓶で熟成させる中国や沖縄、九州南部などで作られる蒸溜酒の古酒についても同様です。エタノールと水とは、時間が経つことで、トゲのないまろやかな液体になるのです。

そういうわけで、シナトラセレクトは、エタノールと水の交合という意味での熟成に比べ、樽材の溶出という観点での熟成が加速しているわけですから、おそらく熟成年数はそれほど高くないものが多いのでしょう。(にもかかわらず、飲みやすいのは、テネシー・ウイスキー独特のチャコールメローイングによるものが大きいのかもしれません。)

ゆえに、このシナトラ・セレクトにハイエンドウイスキーらしい年代物のまろやかさ、低刺激感をイメージすると少し期待を裏切ることになってしまうかもしれません。ただし、バーボンもといテネシー・ウイスキーとして飲めば、これほど優れたウイスキーは他にないのでは、と思います。期待値の持ち方で、かなり評価が変わるウイスキーと言えるのではないでしょうか。

ジャックダニエル シナトラセレクト(Jack Daniel’s Sinatra Select)の総評

スコッチのハイエンド銘柄とは異なったタイプの価値があるウイスキー。特に手のかかったバーボン・ウイスキー、テネシー・ウイスキーとして見れば、これほど素晴らしいウイスキーもないでしょう。おそらく限定発売なので、買うなら今。おすすめです!

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