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トリスクラシック(Torys Classic)の期間限定バーでジャパニーズウイスキーの文化史に触れてきました

六本木ヒルズの大屋根プラザで開催されたトリスクラシックの期間限定バーに行ってまいりました。

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CMを再現したボード

筆者はテレビを持たないので最近の俳優さんやCMについてはほとんど知らないのですが、いま話題のCMに使われているセットを再現したものがあったり、そのCM足らずに出ている俳優さんが映ったポスターがあったりと、マーケティングのにおいが強く感じられました。

トリスを知った。ウイスキーを知った。

というコピーは、ウイスキーの入門に是非トリスクラシックを、ということなのでしょうか。

CMについて

トリスのコースター
トリスのコースター

私の記憶では、「角」のCMは小雪という若い女優さんが出ており、トリスエクストラ・ハイボールのCMには更に若い女優さんが無邪気に笑顔を振りまくようなCMであったように思います。

もとよりトリスはカジュアルにウイスキーを楽しむための銘柄ですから良いとは思うのですが、昔のCMにはもう少し大人っぽさがあったように思います。(というのは私が歳をとったのかもしれせん。)

さて、件のトリスクラシックのCMをネットで拝見すると、記憶にある「角」やトリスエクストラ・ハイボールに比べてだいぶオーソドックスな印象で、カジュアルすぎず、フォーマルすぎず、良い意味で無難な線を狙ってきたなーと思いました。

ただ、演出についてはいろいろ思うところがあります。

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トリス限定バーの看板

ウイスキーを飲んだことがないと思われる客に「最初にこれ飲んどけってのありますか」と聞かれ、その回答に「ピンときたのでいいんですよ」というのは、いかにトリスバーという設定であるとはいえ、いかにCM上の演出とはいえ、バーテンダーの仕事としては違和感があります。

しかもマッカランラフロイグボウモアといった、サントリー社が輸入を担当している定番の王道シングルモルトが無造作に並ぶ中、どちらかといえば低価格帯のトリスを出すかなあ…。ウイスキーを愛するバーテンダーなら、最初の一杯は「定番の王道」を出しておくのでは。

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CMの背景に映ってたコースター

それと、「恋と一緒」とか「初恋ですか?」とかいうのは、ウイスキーを語る上ですごく違和感を覚えます。おそらくターゲットである若年層むけにプロが考えぬいたコピーなんでしょうけど、頑固で昔気質の人間である私は、やっぱりちょっと浮ついて薄っぺらい印象を覚えてしまいます。

一方で、こうした演出に洒脱さを見出す若年層がいたり、若かりし頃の恋愛を思い出す熟年層がいたりすることも確かでしょうから、ようは単純に私がターゲット外なんでしょう。寂しいことですが・・・。

トリスクラシックの香りと味わい

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野外のカフェらしいプラスチックカップで供されます

さて、CMの演出に文句をつけるのは本意ではありません。肝心の味わいについて。まずはスタンダードとして推されているハイボールスタイルでいただきました。もちろん氷と炭酸以外には何も入れません。普段はウイスキーはストレートでしか飲まないので、かなり新鮮に感じます。

炭酸は荒々しく注がれ、かち割り氷が溶けまくり、悪く言えば雑、良く言えば爽快感があります。香りは、炭酸が強すぎるゆえかあまり感じられず、スパイス感のないウッディさ、渋さがほのかに感じられる程度です。

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歴史を感じる展示のトリスグッズ

当然ながらスモーキーさは感じられず。樽感も弱いです。後口にほのかな甘み、ほのかな苦味。プラスチックの飲み口がガタガタなので、味わいは非常にイマイチ。

総合して、ウイスキー風味がほのかに薫る炭酸水、といった具合。のどが渇いたのでガブガブ炭酸水を飲みたいが、ただの炭酸水を飲むのは味気ないし…といった時にはベストかもしれません。値段も安いので気軽にガブガブ飲めます。

しかし「ウイスキーを楽しむ」という観点では味気ない。これはやっぱりハイボールという飲み方がイカンのだろう、ということで、ストレートを頼んでみました。

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専用ロックグラス。新品が入った箱を別途くれます。

ストレートはメニューになかったので、ロックのセットを頼み、「氷抜きで」と頼みました。店員さんは快く対応してくれます。

なんと持ち帰り用のグラス(アンクルトリスの顔が底に彫られています)がついて300円。恐ろしいコストパフォーマンス。

最近、『使ってもらえる広告』という書籍で、「情報はタダで溢れておいるので、役立つような広告でなければ成果が出ない」といった趣旨のことが語られていましたが、その意味でこのアンクルトリスが掘られたグラスは非常に秀逸なものだと思います。

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トリスのオールドボトル

あらためて、トリスクラシックをストレートで飲んでみました。酸味、煙たさなどは一切なし。この価格帯に望むべくものではありませんが、やはり香りは弱い。グラスも、香りを楽しむための作りにはなっていないので、それも一要因かもしれません。

シェリー樽を使用しているそうで、それゆえの柔らかい果実感のある香りがほのかに感じられます。ですが、あくまで明確に感じられるようなインパクトはありません。廉価のウイスキーらしい、パンチの弱い香りです。

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燻製されたと思われるナッツが非常に美味しい

モルト、グレーンらしい香りも弱い。コーンの甘さも控えめ。味わいは、若さゆえのピリピリ感、スパイス感、刺激感も後口にあります。サントリーの安酒らしい、薄さとマイルドさ。

ウイスキーというより、微妙に色と香りがついた甲類焼酎、といった印象です。いわゆる「ウイスキー」を期待すると裏切られますが、1000円弱でそれらしい味わいのものを楽しめるのは悪くないと思います。

味わいに関しては期待を超えるものではありませんでしたが、歴史を感じる展示品などは充実しており、そうした観点では楽しめました。古今東西ウイスキー文化はありますが、ここまで大衆文化として親しまれている銘柄はそう多くないと思います。

今回は辛口の批評になってしまいましたが、それだけ愛と期待を込めたつもりですし、次回のイベントも機会があれば行きたいです。

※余談ですが、BGMはBreakWaterのWork it Outなどおしゃれでした。

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