ウイスキーノート

【樽のパイオニア】グレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)とは

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)とは、ハイランド・モルトに分類されるスコッチウイスキーです。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)について

グレンモーレンジィ蒸溜所のシリーズ商品。手前からミルション、18年、ネクタードール、キンタルバン、ラサンタ、オリジナル。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)は、さまざまな界隈にて、とにかく評価の高いシングルモルトです。著名なウイスキー評論家である ジム・マーレイのウイスキーバイブルでは94点を例年連発。数多くのGREN~銘柄を抑えて常にシングルモルトウイスキー界でのトップクラスに君臨しています。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)はもともとエールビール醸造所でありましたが、1823年からウイスキー製造の免状を取得して200年近くウイスキーを作り続けています。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)の特徴のひとつは、ポットスチルに中古のジン用のものを利用していること。これがスコットランド最長のポットスチルで、なんとキリンと同じ背丈、5.14mもあるとのことです。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)のポットスチルは、焚き口からスワンネックまでの位置が長く、また非常に細身であることから、それだけアルコールを含んだ蒸気がポットスチルの内肌に触れる面積が大きく、そのぶん分縮が増え、雑味を含んだ蒸気の多くがモロミ内に戻るという特徴があります。

つまり、他の一般的なポットスチルに比べて、ライトでクリーンな原酒が作られるというわけです。

高硬度の仕込み水で作られるストラスアイラ。こちらも華やかでフローラルな香りが特徴。

次にグレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)が特徴的なのは、ターロギーの泉からとられる、高硬度の仕込み水を使っているという点です。一般的に、ウイスキーの仕込みは軟水に限ると言われていますが、グレンモーレンジィは硬度が高いことをわかったうえで使っています。

酒造において、一般に軟水が好まれる理由は、おそらく酵母に与える影響を懸念してのことだと思います。ミネラルが多い(=硬度が高い)と、酵母の発酵を阻害すると言われています。特にカルシウムやマグネシウムがあると、発酵回路がうまく働かない場合があるそうなのです。

しかし日本酒における「灘の宮水」のように、硬度が高いために良い酒が作られることもあります。このあたりの仕組みを、私が素人ながら推測すると以下の通りになります。

硬度が高いと、酵母の通常の発酵回路が阻害される分、特殊な発酵回路が走ります。それによって、軟水での発酵とは違った特別の香味成分が生まれているのでは、というものです。

じっさい、日本酒において近年ひじょうにありがたがられている、メロンやバナナのようなエステル香である「吟醸香」は、酵母が働けるギリギリの低温にして酵母をいじめ抜くことで、通常のアルコール発酵とは違った特殊な発酵回路を働かせることで特別な香味成分を生んでいると言われています。

これと同じような理屈で、硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムによって通常のアルコール発酵回路とは別の回路が走り、グレンモーレンジィの華やかな香りが生まれているのでは、と思うのです。

これを下支えする理屈として、高硬度の水を仕込み水にしている下記の銘柄は、花を思わすスイートで華やかな香りで知られているものが少なくありません。特にストラスアイラザ・グレンリベットハイランドパークなどはわかりやすいのではないでしょうか。

地域分類 蒸溜所名前 水源(いずれも中硬水)
ハイランド オーバン グレネベリー湖
スペイサイド ザ・グレンリベット ジョジーの泉
スペイサイド ストラスアイラ ブイエンの泉(ブルームスヒル)
アイランズ スキャパ 蒸溜所周囲の泉
アイランズ ハイランドパーク クランティットの泉
ローランド グレンキンチー ラマルミュアーの泉

※ウイスキーコニサー資格認定試験 教本2015上 P42 表-7 より抜粋

また麦芽はごくごくライトピートで、すべてをスコットランド産の大麦で賄っていたり、「16人の技師」としてスタッフがブランディングを担っていたり、仕込みのすべてをシングルモルトとして販売したりと、語り尽くせないほどのさまざまな特徴があります。

そうした特徴の中でももっとも有名なのは、樽材へのこだわりです。「カスクフィニッシュ」の概念を生み出した樽のパイオニアとして知られるグレンモーレンジィとあって、樽材であるアメリカンホワイトオークは、アメリカのミズーリ州の北にある森の林業家と契約して作っているそうです。

木材は二年間天日干しを行い、ヘビートーストの後にライトチャーすることでキャラメライズが進み、最初から長期熟成が可能な樽を作ってます。そうして作られた樽のファーストフィル、セカンドフィルをふんだんに使って、バニラ香を強く引き出すというわけです。

グレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)の香りと味わい

グレンモーレンジィのグラス。なんと6杯。ひとつ30mlとしても、大変な量です。

グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)の蒸溜所がもつ数ある銘柄の中で、スタンダードとして最も出回るのが10年熟成のグレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)です。

別途、個別銘柄の記事でこまかく解説する予定ですが、カスクフィニッシュ銘柄も、基本的にはブレンド済みのグレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)を別樽にて熟成させて完成させて作られます。

つまり、すべてのグレンモーレンジィ銘柄の基礎にあるのがこのグレンモーレンジィ・オリジナルというわけです。

さて、そのグレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)を口にしたのは、2016-06-25のMHD(モエ・ヘネシー・ディアジオ)社とリカーズハセガワ社が主催する勉強会です。

香りはスイート、バニラ香、オレンジ、ブリニー、花、ハニー、ナッツ、チョコレート。全体に、香りの幅が広く、また複雑です。繊細さ、上品さを極めたひとつの芸術作品とも言うべき素晴らしい香りです。

味わいは刺激弱めでクリーミィ。オレンジ様の含み香が立ち、フィニッシュには微妙な粉っぽさがありますが、気になるほどではありません。やはり、香りの良さを最大化しつつ、味わいにも最大限のケアをしていることがよくわかる、素晴らしいバランスです。

この完成度まで持ってくるためには、モロミ、蒸溜、樽熟成、ブレンドなどさまざまな要素で、数十年単位での試行錯誤が必要だったでしょう。200年の重みが感じられる、圧倒的な完成度と言って良いでしょう。

グレンモーレンジィ・オリジナル(GLENMORANGIE ORIGINAL)の総評

非の打ち所のない完成度の高いシングルモルト。スコッチ・ウイスキーを知るには避けて通れません。パーフェクトな銘柄です。とにかくオススメです!

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