長濱蒸溜所とは
長濱蒸溜所とは、長濱浪漫ビール社が所有する蒸溜所。非常に小さい蒸溜所であるため、いわゆるマイクロディスティラリーのひとつに数えられます。
長濱蒸溜所は琵琶湖のほとり、駅で言うとまさに長浜にあります。
新幹線の通る米原駅から電車で15分ほどなので、日本各地からのアクセスも非常に良好です。
長濱蒸溜所に着いてみると、そこは蒸溜所というより、クラフトビール製造所とその直売レストランといった塩梅でした。
建物の外には、貯蔵前と思われる樽があり、この点は僅かな蒸溜所感がありました。
店内にはいると、席に案内されます。一人客は珍しいようで、スタッフの方にちょっとキョトンとされましたが、無事対応いただけました。
店内はおそらくチェコやドイツの田舎街を意識していると思われる作りです。非常に新鮮に感じるのは、おそらく、蒸溜所めぐりでスコットランド風の内装を見慣れたためでしょう。
注文したのは、蒸溜したてで樽熟成されていない未貯蔵原酒、つまりニューメイクを使ったハイボールです。
(長濱蒸溜所ではニューポットではなくニューメイクと呼ばれます)
すでにオンライン通販で長濱蒸溜所のニューメイクの味は知っていましたが、獅子柚子と呼ばれる近辺の名産品をスパイスに利用したこのハイボールは、期待以上の香りと味わいでした。
この長濱ハイ、かなりの完成度だったため、非常におどろきました。さすがビール製造会社、容器や炭酸の扱いなど、細かい部分で技が光ります。
一級のバーではなく、ちょっとしたレストランといった居住まいで、このクオリティのカクテル(広義)が飲めるのは驚異といって良いのではないでしょうか。
また、アテとして頼んだかつおのタタキも非常に素晴らしい品質で、これも驚きです。
さて、食事とお会計を済ませたあとは、スタッフさんに許可をとったうえで、場内を見学させていただきます。
長濱蒸溜所のポットスチルは、「アランビック」と呼ばれているポルトガル製のもので、非常に珍しいタイプです。
アランビックとは、一般的には蒸溜器とイコールの意味で使われます。
ここで固有名詞的に使われるのは、「アラビアからヨーロッパに伝わったアラビア風の蒸溜器」として典型的な、いうなれば「ザ・アランビック」だから、なのかもしれません。
一般的なポットスチルとの比較にどれほど意味があるかわかりませんが、その形状から推測される味わいを考察してみます。
まず、容積が非常に小さいので、相当にヘヴィな原酒になると思われます。容積が大きいと、軽い気体しかラインアームに届きづらいのですが、容積が小さければ、エタノール以外のリッチな成分もラインアームに届きやすくなるためです。
一方で、ポットスチルの本体はボール型、ランタンヘッド型に近いため、内部に気流も生まれることが推測されます。気流から外れた軽い成分のみがラインアームに向かうことになるため、その分はライトな原酒になることが推測されます。
※下記は参考として挙げる宮城峡蒸溜所のポットスチルです。
またラインアームは非常に細く、気体が内壁に触れる割合も大きいですから、液化の進行も進みやすく、その分リッチな酒質になるでしょう。
さて、ポットスチルの考察はこのあたりにしておいて、次は樽について見てみます。
ポットスチルの隣には、簡易的にダンネージ式に積まれた樽があり、樽の鏡板にはペンで特徴がわかりやすく書かれています。たとえばアメリカの「ヘブンヒル」蒸溜所の樽で、「ピーテッド」原酒を貯蔵している、といった具合です。
また入り口横には、貴重なミズナラ樽もありました。
樽に色がついているのは、柿渋の色でしょう。貴重な樽ですから、この樽で育まれたウイスキーなかなか簡単には手に入らないでしょう。将来、なんとかありついてみたいものです。
おいしいハイボールとうまい食事、そしてウイスキーについてもあふれる浪漫がある長濱蒸溜所、興味のある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
長濱蒸溜所の情報
名称 | 長濱蒸溜所 |
創業 | 2016年11月 |
所有者 | 長濱浪漫ビール株式会社 |
HP | 長濱蒸溜所 |
住所 | 526-0056 滋賀県長浜市朝日町14−1 |
アクセス | 長浜駅から南に徒歩5分 |
特記事項 | アランビック型の非常に小さなポットスチル。 スチームによる間接加熱、シェル&チューブタイプの冷却器。 |
以下、余談です。
この蒸溜所を訪れたのは、2017年1月28日の土曜日。山崎蒸溜所の見学ツアーからそのまま足を伸ばして向かいました。
時間に余裕がある方は、長浜駅から歩いて10分程の旅館「浜湖月」の温泉をおすすめします。入浴料は1500円とかなりのお値段ですが、露天風呂では湖上の月をみながらゆったりとお湯につかることができますよ。