笹の川酒造の建物。煙突の上部は東日本大震災で倒壊してしまった。

【見学レポ】安積蒸溜所

安積蒸溜所とは

安積蒸溜所とは、笹の川酒造が所有する蒸溜所です。

笹の川酒造といえば、「チェリーウイスキーEX」などの銘柄で知られますが、近年の話題で知られているトピックとしては、やはり今をときめくイチローズ・モルトの大恩人(?)であるということでしょう。

緑の瓶が特徴的
緑の瓶が特徴的なチェリーウイスキーEX。これも笹の川酒造の製品。

東亜酒造時代に羽生蒸留所でつくられたモルト原酒が破棄されるという危機におよび、東亜酒造のあと継ぎであった肥土伊知郎氏の頼みによって樽の保管を申し出たのが笹の川酒造でした。いまでも東亜酒造時代の樽は笹の川酒造のウェアハウスに残っています。(当記事にてのちほど写真でご紹介します)

なにをきっかけで知ったか忘れてしまいましたが、クラフトディスティラリーブームの中でもすでに実績のあることで知られる笹の川酒造が樽オーナー制度(といってもボトル2本分ですが)をはじめるということで、当然のごとく応募しました。

笹の川酒造は古くからウイスキーも製造していました。ゆえに、もともと旧蒸留設備で作ったモルト原酒の在庫が十分にあり、それでこれまでの供給をまかなえていたのですが、近年のウイスキーブームであらためて「安積蒸溜所」として原酒製造に乗り出し、その当面のキャッシュ補填を目的のひとつとして樽オーナー制度をはじめたというわけです。

そのオーナーむけの企画ということで見学会を兼ねた昼食会があり、遠路はるばる参加しました。2017年3月25日、よく晴れた土曜日でした。

安積蒸溜所は福島県郡山市にあります。最寄り駅は郡山駅から一駅の安積永盛駅ですが、今回は郡山駅からのバスで笹の川酒造に向かいました。

郡山駅からの路線バス。このレトロ感が旅情を誘う。
郡山駅からの路線バス。このレトロ感が旅情を誘う。

「笹川」バス停で降車し、笹の川酒造のほうに向かうと、蛇行する川にぶつかります。

すると、ほどなくして、有名な笹の川酒造の建物が目に入ります。

笹の川酒造の外観。開けた土地にポツンと浮かびます。
笹の川酒造の外観。開けた土地にポツンと浮かびます。

直前にはボトリング施設と思われる場所があり、さすが酒造の一大企業という趣です。おそらく樽からの瓶詰めもこちらで行っているのではないでしょうか。ボトラーズと呼ぶにはいかにも和風の佇まいですが、それも味わいですね。

笹の川酒造が取り扱う酒のボトルも回収しているらしい、福島容器株式会社。
笹の川酒造が取り扱う酒のボトルも回収しているらしい、福島容器株式会社。

さて、Googleマップをもとに川沿いをてくてく歩いて行くと、なんと笹の川酒造への入り口はありません。川沿いの散歩道から少し離れて、道路沿いの正門から入るようにしましょう。

さて、何かの倉庫が昼食会会場と試飲場として開放されており、そこで受付を済ませてツアーの順番を待ちます。

笹の川酒造の敷地内に作られたバーカウンター
笹の川酒造の敷地内に作られたバーカウンター

贅沢な福島産の料理も並んでいました。硬めのパイ生地にレーズンとバターが詰まっている料理がウイスキーにぴったりで非常においしかったです。

昼食会会場には福島産の名物料理が並ぶ。
昼食会会場には福島産の名物料理が並ぶ。

さて、食事といっしょにチェリーウイスキーなどを試飲しながら談笑していると順番がきました。さっそく見学開始です。

まずは焼酎の蒸留所。なんと減圧蒸留器です。これは筆者もはじめてみました。一般的な単式蒸留器に減圧機能がついているのですね、これは驚きました。

笹の川酒造の減圧蒸留器
笹の川酒造の減圧蒸留器

ポットスチルの左に見えるはシェル&チューブ型の冷却器だと思われますので、その奥にあるのがおそらく減圧機構なのでしょう。非常に興味深いです。

さて、次は原料となる麦芽の紹介がありました。これはマルス信州蒸溜所や秩父蒸溜所でも取引のあるクリスプ社のモルトです。コンツェルト種ともう一種が使われているそうです。

積み上げらたクリスプ社のモルト。これがすべて原酒に変わるのだと思うと期待に胸がふくらみます。
積み上げらたクリスプ社のモルト。これがすべて原酒に変わるのだと思うと期待に胸がふくらみます。奥にはシェリーバットも見えます。

そして次はついに、念願の安積蒸溜所のポットスチルの見学です。

安積蒸溜所のポットスチル。見学のしやすさなどは度外視されていることがよくわかる、クラフトディスティラリーらしい配置。
安積蒸溜所のポットスチル。見学のしやすさなどは度外視されていることがよくわかる、クラフトディスティラリーらしい配置。

ガスによる間接加熱、ストレートヘッドで下向きのラインアーム、シェル&チューブ型の冷却器。単に形の特徴だけでみると、ニッカでいうところの、余市と宮城峡の中間的な味わいの原酒が作られると予想されますが、スチルが小さいことを加味するとそれだけヘヴィな原酒になることが想定されます。

使用されるモルトとニューポット。
使用されるモルトとニューポット。

モルトだけを食べると、非常に甘く、なるほど甘く芳醇なモルト原酒を作る笹の川酒造の原料だな、と感じます。ニューポットも、珍しいことでフォアショッツ、ハート、フェインツの三種の香りをテストでき、それぞれの違いを知ることができました。

フォアショッツは鮮烈、ハートは芳醇、フェインツは希薄、といった表現でしょうか。

縦型の粉砕機。ここまで小型のものは初めてみます。
縦型の粉砕機。ここまで小型のものは初めてみます。

おもしろいのは粉砕機。非常に小型で縦型のタイプ。なかなか見られないものです。

最後は樽の保管庫、ウェアハウスです。

中には、私達が共同オーナーになっている樽がありました。ABの2樽のバーボンバレルです。

自分がこの2つの樽の共同オーナーだと思うと感慨深い。
自分がこの2つの樽の共同オーナーだと思うと感慨深い。

5年後、これらの樽から詰められたシングルカスクのボトルが届くと思うと非常に胸が熱くなります。

ウェアハウスの中には、伝説となっている東亜酒造の樽、つまりイチローズ・モルトとなる原酒も眠っていました。

イチローズ・モルトの樽。販売権は当然、肥土伊知郎氏が持っている。
イチローズ・モルトの樽。販売権は当然、肥土伊知郎氏が持っている。

面白いことに、カリラやリンクウッドといった銘酒の2空き樽と思われるものもあり、幅広い原酒の製造が期待できます。あるいは、原酒を樽買いして、ブレンデッド用に使っているのかもしれませんね。

カリラとリンクウッドの樽。
カリラとリンクウッドの樽。

キリがないのでこの辺で写真を貼るのはやめておきますが、長濱蒸溜所と同じくヘブンヒルの樽があったり、ゴールドラムの樽やミズナラ樽があったりと、樽の種類の幅の広さには困らない様子です。今後のラインナップが非常に楽しみですね。

敷地内には松尾大社もあり、このあたりは「日本の酒の会社」らしさがあって、なんだかホッとおちつく気持ちです。

笹の川酒造の敷地内の松尾大社。
笹の川酒造の敷地内の松尾大社。

さて、こんな安積蒸溜所ですが、蒸留設備の見学は特別な機会がなければ見られないので、ウイスキーファンの方は、ウイスキーガロアなどの雑誌やWEBで情報を集めておくと、見学の機会を得られるかもしれません。

安積蒸溜所は、いろいろと興味深く見られる場所が多くあり、見学も非常に楽しめます。おすすめです!

安積蒸溜所の情報

名称 安積蒸溜所
創業 1946年(旧設備) 2016年4月(新設備)
所有者 笹の川酒造株式会社
HP 笹の川酒造株式会社
住所 福島県郡山市笹川1-178
アクセス 安積永盛駅から徒歩10分、郡山駅からバスで20分
特記事項 イチローズ・モルトの誕生に深く関わる。チェリーウイスキー、「山桜」などの銘柄で広く知られる。
小さめのポットスチル、スチームによる間接加熱、シェル&チューブタイプの冷却器。

以下、余談です。

近辺には、「自然酒」で知られる仁井田本家があり、こちらの訪問もおすすめです。要予約ですが、非常に高品質で自然に優しい日本酒の作りを見学できます。機会があればぜひ!

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