十年明(じゅうねんみょう)のボトル。

【菜の花の明かり】十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)

「十年明(じゅうねんみょう)」は、三郎丸蒸留所を構える若鶴酒造のブレンデッド銘柄。7年もののモルトウイスキーがキーモルトに用いられた、リッチでスモーキーな香りが特徴です。

十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)について

「十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)」は2020年6月に富山県の三郎丸蒸留所(若鶴酒造)から発売になった銘柄。

十年明(じゅうねんみょう)のボトル。
十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)のボトル。高級感のあるデザイン。

三郎丸蒸留所といえば、2016年に老朽化した蒸溜所を改修するためのクラウドファンディングを行ったことでも有名です。

2017年にリニューアルした三郎丸蒸留所
2017年にリニューアルした三郎丸蒸留所。新しくてきれい。

また2019年では、富山県に伝わる梵鐘づくりの技術を活用した鋳造製のポットスチル「ZEMON」を開発したことでも話題になりました。

世界初の鋳造製ポットスチルZEMON
世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」。階上からの撮影。

今回は7年物ということで、ZEMONよりまえ、さらにクラウドファンディングによるリニューアルをする前の旧蒸留器で蒸溜された原酒がキーモルトになっていることがうかがえます。

三郎丸蒸留所の貯蔵庫
三郎丸蒸留所の貯蔵庫。ミズナラカスクもある。

さて、この「十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)」の裏面のラベルを見ると、以下の解説があります。

三郎丸蒸留所の近くに、“十年明(じゅうねんみょう)”と呼ばれる地があります。

かつてここには、明かりを灯すための油を採る菜の花畑が広がっていました。
その灯のように、人々の心を優しく照らしたい…そんな願いをこめて
十年明と名付けられました。

三郎丸蒸留所の7年以上のモルトウイスキーをキーモルトとしてブレンドした、スモーキーで豊かな味わいのウイスキーです。

十年明(じゅうねんみょう)のバックラベル
十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)のバックラベル

まさに上記の説明にあるように、この三郎丸蒸留所の近辺は菜種油をとる菜の花の栽培が盛んだったようで、たしかにこの三郎丸蒸留所の最寄り駅は「油田(あぶらでん)」です。

三郎丸蒸留所の至近の油田駅
三郎丸蒸留所の至近の油田駅。菜の花を栽培していたらしい名前。

筆者は以前、三郎丸蒸留所にうかがってテイスティングしたことがありますが、現地でボトルを購入したのであらためてレビューしたいと思います。蒸溜所紀行については別途記事にしますね。

十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)の香りと味わい

まず香りから。46度とアルコール度数高めなのでなかなかの香り立ち。

ヨード感強めのピート香がはっきりときます。スモーキーというよりピーティですね。いまのところ原料はスコットランドから輸入しているとのこと(Crisp社)なので、海に近いエリアでのピートモスを原料に乾燥させたのかもしれません。

その後、存外に甘い香り。しっかりとシュガー感のある甘い香りが全体をまとめています。精麦済みのモルトを噛んだときのじんわりとした甘い香りがしっかりと残っています。まるで減圧蒸留の米焼酎のようにはっきりと。

総合して、バニラやフルーツはあまりなく、ピート感と、モルト由来の甘い香りが強いのが特徴といった感じです。

次にストレートで味わいます。やはりピートが駆け抜けますが、未熟成感やスパイス感はなく、非常にスムースです。そして強烈に甘く感じます。

ここまでピーティなブレンデッドというとそれほど多くありません。少なくとも大手の国産ブレンデッドのスタンダード銘柄では、ここまで主張を尖らせたものはないのではないでしょうか。

加水すると、洋梨のフルーツ感が増しますが、ピート由来の香りバランスが崩れる印象です。少しの加水で一気に印象が変わりますね。加水で印象が大きく変わるのはノンチルフィルタード製法に起因するものかもしれません。

十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)の総評

十年明セブン(じゅうねんみょうセブン)は若鶴酒造を代表する銘柄の一つとして素晴らしい一本といえるでしょう。

価格は4000円前後と決して安くはありませんが、国産のピーティなブレンデッド銘柄を知る意味で十分に楽しめる銘柄であるといえるでしょう。

なにより、ZEMON以前の旧蒸溜器のモルトは今後生まれないでしょうから、そういう意味でも貴重です。早めの入手をおすすめします!

この記事のURLとタイトルをコピーする