「キリンウイスキー陸」は、キリンウイスキーのブレンデッド銘柄。惜しまれながら終売になった「富士山麓」を意識したと思われる50度の強い度数と香りが特徴です。
キリンウイスキー陸について
「キリンウイスキー陸」は2020年5月に発売になった銘柄で、当時あまりにも売れすぎていた「富士山麓 樽熟原酒50°」の後継になることが期待されていたと考えられます。
この「富士山麓 樽熟原酒50°」も、「富士山麓 樽熟50°」なるほぼ同名の銘柄のリニューアルとしての位置づけでしたが、これがとにかく衝撃的なおいしさでした。
名の通り50度の強い度数で、バニラ香、木香などがリニューアル前に比べて非常に豊かになっていました。それが700mlで1500円。ちょっとした価格破壊に近い銘柄です。
筆者は国産ブレンデッドだとニッカウヰスキーの「フロム・ザ・バレル」が好きなのですが、500mlで3000円弱という価格なのでちょっとしたプレミアム銘柄。お祝いのような日にしか栓を空けません。
しかし「富士山麓 樽熟原酒50°」はその代替として、日々の食事の食前酒としてハイボールにするなど、もちろん食後酒としてストレートでいただくなど、ふだんの食卓で大活躍でした。
それゆえに「富士山麓 樽熟原酒50°」の終売は残念だったのですが、どっこい今回の「キリンウイスキー陸」も期待にもれず素晴らしい出来ではありませんか。
昨今のジャパニーズウイスキーブームで原酒が不足しているゆえか、公式WEBサイトでも語られているようにキリンシーグラム社のネットワークを使って世界中から良い原酒を集めてきて、ノンチルフィルタード、グレーン主体でまとめたとのこと。
キリンウイスキー陸の香りと味わい
まず香りから。バランスの取れた甘い香り。良い意味でキリンのブレンデッドらしい、まあるくまとまった柔らかい甘さです。やはりグレーンの割合が大きいためか、コーンの香りなどバーボンに通じる部分がありますが、一般的なバーボンに比べると樽感はおだやかでモルトがある分の深さもしっかりと感じます。
花や果物のような香りというよりは、樽のバニラ感が柱になっています。これまでのキリンらしくスモーク感は抑えめ。
まずはストレートで味わいます。期待通りにスムースで甘さがあります。ビターというよりはスパイス感が強め。口の中に広がる中で山椒のピリピリ感がましていきます。
水割りやハイボール、お湯割り、はてはコーラ割りなど、さまざまな飲み方をブランドメッセージとして提唱している銘柄ですが、ストレートでも成立するブレンドになっていると感じました。
やはり熟成年数はそれほど長くないため、10年以上熟成のブレンデッドに比べると情報量が少ない味わいではありますが、1500円でこのクオリティならまったく問題になりません。
少しだけ加水すると、香りと味わいが一気にビターになりました。少しの加水で一気に印象が変わりますね。加水で印象が大きく変わるのはノンチルフィルタード製法に起因するものかもしれません。
ハイボールにすると香りは弱くなりますがビターさは強調され、食事にあう素晴らしいハイボールになりました。
2倍の水割り、トゥワイス・アップにするとまたバランスが良くなります。いわゆる洋梨系の軽くフレッシュな香りが強く、非常にライトですが美味しいものになりました。これは水割りにして食事に合わせるのはよいですね。
ちょっとした旅行で駅弁を食べるときに、冷たいお茶の代わりに水割りの陸があれば最高ですね。
やはり薄めに割ることで真価が発揮されるのかもしれません。
キリンウイスキー陸の総評
キリンウイスキー陸はキリンの主力ブレンデッドとして、「富士山麓樽熟原酒50°」の正統な後継者として十分な実力がある素晴らしい銘柄といえるでしょう。
しかもこれが1500円程度で買えます。むかしの樽熟原酒50°に比べるとお得感は控えめになってしまいましたが、それでも十分にコストパフォーマンスに優れた銘柄であるといえるでしょう。
この銘柄も人気が過熱すると終売になる可能性もあるので、早めの入手をおすすめします!