富士御殿場シングルグレーン25年とは
富士御殿場シングルグレーン25年とは、キリンの静岡の富士御殿場蒸溜所で作られるジャパニーズ・シングルグレーンウイスキーです。バッチ式のケトル型蒸溜器で作られているのが特徴。
富士御殿場シングルグレーン25年について
富士御殿場シングルグレーン25年は名の通り、静岡の富士御殿場蒸溜所で作られたグレーン原酒のうち、25年以上経った原酒のみがボトリングされています。
富士御殿場蒸溜所のグレーン製造はかなり特徴がありますので、以下にいろいろと説明いたします。
ひとつは、ケトル型と言われる、バッチ式のグレーン蒸溜器を使用していることです。一般的には、グレーンウイスキーの蒸溜器は、連続式蒸溜器とよばれるものを使います。
連続式蒸溜器は、一定量のモロミを入れて蒸溜、洗浄、また蒸溜を繰りかえすために手間がかかるポットスチル型蒸溜器(=単式蒸溜器)に対して、継続的にモロミを投入することで効率的にアルコールを取り出すことができるという特徴を持っています。
連続式蒸溜器は、スコットランド人のロバートスタインが考案し、アイルランド人のイーニアス・コフィーが改良、特許取得を行いました。連続式蒸溜機はより純粋に近いアルコールを蒸溜することができるため、調合によって作られる日本のイミテーション洋酒製造にも活用されていました。摂津酒造の岩井喜一郎はフーゼルオイル・セパレーターと呼ばれる設備を開発して高品質なアルコール製造を行い、摂津酒造の経営に大きく寄与していたと言われています。
またイーニアス・コフィーが改良した当時の型の蒸溜器はコフィースチルと呼ばれ、最新鋭の連続式蒸溜機に比べてモロミの風味が残りやすいという特徴があり、ニッカの宮城峡蒸溜所にも導入されています。近年では、サントリーの白州蒸溜所にもほぼ同型の蒸溜器が導入されたと言われています。
このように、グレーン製造といえば連続式蒸溜機、連続式蒸溜機の中でも良い物はコフィースチル、という暗黙の文化があるなかで、あえて「ケトル型」と呼ばれる特殊なグレーン製造設備を利用しているキリンの富士御殿場蒸溜所は、かなりの独自路線を突っ走っているといえるでしょう。
ただ補足として、キリンの富士御殿場蒸溜所は、上記のケトル型以外にも、
- 「マルチカラム式」と呼ばれる、いわゆる連続式蒸溜器
- 「ダブラー」と呼ばれるシーグラム社直系のバーボンタイプの蒸溜器
というグレーン蒸溜設備があり、多様な原酒を作っています。
富士御殿場シングルグレーン25年は、中でもケトル型で作られた原酒のみで作られています。上述した連続式蒸溜機に比べて、風味が残るグレーン製造が行われているため、それが製品にも活かされています。
富士御殿場シングルグレーン25年の香りと味わい
富士御殿場シングルグレーン25年を味わったのは、富士御殿場蒸溜所のテイスティングエリア。有料試飲を頼んだ人だけが入れるバーカウンターにて、優雅にいただきました。(有料試飲セット2000円で最高に贅沢な気分になれます。)
既に無料試飲で二杯(富士山麓樽熟原酒50°とロバート・ブラウン)飲んでいたので若干酔っており、きちんとテイスティングできるか不安でしたが、それでもはっきりと個性が伝わる素晴らしいお酒でした。
グレーンとは思えないほどの濃厚で複雑な香り立ち。バナナ、プルーン。トウモロコシの奥に、黒蜜のような、まとまりのよい香味。世界観を感じる複雑で奥行きのある香味。トウモロコシの奥に、和の甘味。ポリフェノール感。
仏教寺院で嗅ぐ香りのような香りがします。(伽羅の香りというのでしょうか。)
水のような口当たり。粘土低く、さらっとしている。ただ口中でものすごく濃厚な味わいに。唾液と混ざることで、チョコレート、ナッツ、レーズンの香り。刺激は以外と残る。穀物感。これは素晴らしい逸品。甘いだけじゃなく、地に足のついたどっしりとした華やかで頼り甲斐のある香り。上滑りしない甘味。
富士御殿場シングルグレーン25年の総評
富士御殿場シングルグレーン25年は、素晴らしく美味しいジャパニーズ・シングルグレーンウイスキーあることは間違いありません。なかなか手に入らない銘柄ですが、富士御殿場蒸溜所に行けば試飲、購入できます。(ただし35,000円ほどします。)安くないですが、とにかくオススメです!
(富士御殿場シングルグレーン25年はAmazonで扱われてないので、同蒸溜所の別銘柄を以下にご紹介します。)