ピート(泥炭・草炭)とは、かんたんに言うと石炭のできそこないのようなもの。
スコットランドのムーア(湿原)では大地自体がピートでできており、古くから手近な燃料として利用されてきました。
ウイスキー製造のさいには、特有の燻香を着けるために、麦芽を乾燥させる工程で焚き染めるときに利用されます。このピート由来の燻製香がスコッウイスキーのひとつの特徴です。
ピートの採掘
ピートを掘り出す畑は「ピートボグ」と呼ばれます。掘り出す道具は「ピートカッター」と呼ばれる独特の縦長いスコップを用いて掘り出されます。
ピートは掘り出された直後は水分を含んでいて燃料としては使いづらいため、水分が飛んで軽く感じられるほど乾燥させます。
ピートの種類
ひとくちにピートといっても、じつは品質はバラバラです。変動要素は、
- 原料
- ヒース
- ヘザー
- 苔
- 海藻
- 葦
- シダ
- リグニンやポリフェノールの含有度合い
- リグニンやポリフェノールの分解度合い
等の違いによって大きく品質が変わるようです。
上記の変動要素は採掘場所によって左右されます。
たとえばオークニーでは木が育ちにくく草花が多いためリグニンやポリフェノールが少なく華やかな香りをつける上等なピートが掘れます。ハイランドパークの華やかさの要因のひとつにはこのピートが活躍しているのですね。
またアイラ島の特に南端では海藻を含んだピートが多く掘り出せるため、ヨードを含んだ薬品香をつけるピートが掘れるのです。
アイラ島南端のキルダルトン三兄弟、
の独特のピーティさはいわずもがなですね。
一方でニッカウヰスキー社が石狩に保持するピートボグでは、葦やシダが主原料のためあまりクセのないピートができるようです。(近年では、ピート麦芽はスコットランドから輸入するので石狩産ピートは一部の例外を除き使われていません)
ピートの焚き染め方
昔ながらのケルンをもちいて麦芽を乾燥させる場合にピートを麦芽に焚き染めるさいは、麦芽の乾燥のはじめのタイミングでピートを投入します。予定まで燻しきったら、無煙炭(コークス)での乾燥に変えて必要以上に燻製香がつくのを避けるわけです。
フロアモルティングを行っている昔ながらの蒸溜所は、ケルンがセットで使われており、程度の差こそあれ、ほとんど例外なくピートを用いて乾燥されます。
※スプリングバンク蒸留所はフロアモルティングによる麦芽自給率が100%である唯一の蒸溜所ですが、ノンピート麦芽の銘柄「ヘーゼルバーン」をリリースしているので、ケルンで無煙炭だけをもちいた乾燥を行っている可能性が高いとふんでいます。
以上がピートの説明でした。