特徴
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NAS ( non-age-statement ) とは、熟成年数を規定しないウイスキー銘柄のことを指します。日本語ではノンエイジ、ノン・ヴィンテージ、ナスと呼ばれることもあります。
一般的に、アイリッシュ・ウイスキー、またはアイリッシュの流れを組むアメリカン・ウイスキーでは、そもそも多くの銘柄がNASしか出していない傾向があります。
例えばアイリッシュ・ウイスキーのジェムソンは。
といったクラス分けになっており、熟成年数でクラスを分けるスコッチとは一線を隠しています。
なぜアイリッシュ・ウイスキーやアメリカン・ウイスキーでNASが用いられるかというと、1つには、「ウイスキーは熟成年数じゃない」という考え方が根底にあります。
そもそもウイスキー製造において樽熟成が一般的になったのは19世紀後半と歴史が浅く、また「○年物」をありがたがる傾向が出てきたのもせいぜいここ数十年の話です。
日本でも、昔から有り難がって飲んでいたジョニー・ウォーカー黒ラベルやオールド・パー、シーバスリーガルといった銘柄は、今でこそ○年物の銘柄も出てきていますが、やはりNASとして知られていたはずです。
ウイスキーは長期で樽熟成すればうまくなるわけでなく、熟成年数にこだわらず良い原酒を良くブレンドして良いウイスキーを作ることが正しいウイスキーメーカーの使命である、という考え方が以前は当然のようにありました。一方で、やはり熟成しているウイスキーの方がうまいということで、熟成年数の目安を書き始めたのがつい数十年前の話なのです。
つまり、熟成年数は結果であって、前提ではないのです。美味しいウイスキーを作ろうと思って、適切な原酒を適切にブレンドしようとしたら、原酒の中には5年ものがあったり、20年ものがあったりする、ということなのです。
一方で、例えば20年ものの銘柄を出そうとすると、選択肢が20年以上樽熟成された原酒に限られるぶん、制限がかかってしまって、完成度が高いウイスキーを作るのは難しくなってしまいます。
このように考えると、同じ蒸溜所でも、たとえば10年ものと20年ものでは、10年ものの方が取りうる選択肢が圧倒的に多く、結果として20年ものより完成度が高く美味しいウイスキーになる、ということも十分ありえるということがわかります。
こうした背景から、竹鶴政孝も、「ウイスキーの銘柄に○年と記載するのは望ましいことではない」という意図の記述をしていました。もっとも、こちらは今で言う虚偽表示、つまり10年ものといいながら、それはあくまで目安であり、若い原酒を混ぜることが横行していたことへの批判も込められていましたが。
ともかく、上記の観点から、NASは選択肢の幅が最も広いことから、単に熟成年数が若い安いウイスキーとは言えないことがわかります。
一方で、近年のマッサンブームを受け、サントリーやニッカウヰスキーの主要銘柄、例えば
などが相次いでNAS銘柄をリリースしたのは、これはもう明確に、原酒不足が背景にあるのは間違いありません。いわば妥協の産物でもあります。
幅広い原酒を使うための挑戦と、原酒不足への妥協、そうした背景が渦巻くNASがだからこそ、背景を楽しんで飲めるのがNASのよいところかも知れません。
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