熟成庫の中。静寂が広がります。

【見学レポ】富士御殿場蒸溜所 熟成庫見学ツアー

富士御殿場蒸溜所の貯蔵庫が見学できる限定ツアーに参加して、面白い話を多数うかがいました。差し支えない範囲でレポートします。

富士御殿場蒸溜所について

展望台から見た富士御殿場蒸留所の景色。右はサイロで左が蒸留塔。サイロの会社のロゴが誇らしい。
展望台から見た富士御殿場蒸留所の景色。右はサイロで左が蒸留塔。サイロの会社のロゴが誇らしい。

富士御殿場蒸溜所はKIRIN社が擁する蒸溜所で、サントリー社の白州蒸溜所と同じく1973年に誕生しました。当時の最新技術を用いて設計されており、マルチカラム、ケトル、ダブラーという3種のグレーン蒸留器を用いて多種のグレーンを製造できることが強みです。

モルト蒸溜用のポットスチルはストラスアイラに良く似た形でフルーティで繊細な香りが抽出されます。

このあたりは、富士御殿場蒸溜所の見学レポの記事にて詳しく書いておりますので興味がおありのかたはぜひそちらをご覧ください。

こちらの記事では、通常の見学コースとは違う熟成庫見学ツアーをご紹介します。

熟成庫見学ツアーは限定ツアーではありますが、特別な資格やコネなどが必要なわけではありません。開催は不定期ですが、まれにホームページ等で参加者を募集しているのでそれに参加するのみです。

ちなみに筆者は、ジャパニーズウイスキーを取り揃える新宿のバー、「ゾートロープ」の店長さんのfacebookアカウントでの投稿でこのツアーの存在を知り、すぐに「キリンの工場見学」サイトから申込みをしました。

この熟成庫見学ツアーに参加したのは2017年10月7日(土)です。仕事もプライベートも用事がやまほどあった時期でした。。。

筆者は東京に住んでいるので、富士御殿場蒸溜所へのアクセスは、

  • 高速バス
  • 新幹線、在来線

の三種が想定されます。前回に高速バスを使って渋滞に巻き込まれて大変な思いをしたのと、時間の都合で今回は新幹線にしました。もちろん帰りは在来線です。

久しぶりの富士御殿場駅。このときは晴れています。
久しぶりの富士御殿場駅。このときは晴れています。

富士御殿場で腹ごしらえをして、路線バスにのって「水土野」で降り、いよいよ蒸溜所へ到着です。

蒸溜所の入り口にスコットランドの国花であるアザミが自生していました。
蒸溜所の入り口にスコットランドの国花であるアザミが自生していました。

受付を済ませると、2階のセミナールームに通していただき、説明ののちにヘルメットを受け取ってすぐに出発。

仕込槽、発酵槽、そしてポットスチルの説明があったあと、普段の順路とは違った出入り口をへていざ熟成庫へ。

ポットスチルの説明までは、通常の見学ルートと同様。ここから熟成庫へ移動します。
ポットスチルの説明までは、通常の見学ルートと同様。ここから熟成庫へ移動します。

熟成庫へ向かう途中も、普段みられない裏側の設備等が横目に見学することができ、これも楽しい経験でした。安全のために撮影禁止だったので写真でお見せできないのが残念です。

熟成庫への道のりは存外に長く、てくてくと下って下ってようやく着きます。従業員さんいわく、温度変化が少なく湿度が適切な窪地にあえて作っているのだそうです。なるほど・・・。

真向かいの熟成庫。ここにも無数の樽が眠っているはず。
真向かいの熟成庫。ここにも無数の樽が眠っているはず。

熟成庫が黒く見えるのは、おそらく天使の分け前によってくる野生酵母によるものでしょう。天使とは酵母のことなのかもしれません。

周辺の消火栓なども真っ黒に変色しています。
周辺の消火栓なども真っ黒に変色しています。

熟成庫は流石にものものしく、従業員さんが渾身の力でドアを開けてくださいました。

熟成庫の入り口。工場らしい無機質さがたまりません。
熟成庫の入り口。工場らしい無機質さがたまりません。

真向かいにも熟成庫があり、こちらは見学では案内されませんでしたが、ここにも無数の樽が眠っているのでしょう。

中に入ると、樽が荘厳に並んだ、神秘的とも言える空間です。

熟成庫の中。静寂が広がります。
熟成庫の中。静寂が広がります。

並ぶ樽のほとんどは、グループ会社であるフォアローゼスのもの。ごく一部、クーパレッジから新調する新樽もごくわずかながらあるそうです。

最下段には空の新樽。地面からの影響を最小限にする意図があるそうです。
最下段には空の新樽。地面からの影響を最小限にする意図があるそうです。

また、富士御殿場蒸溜所12年レッドワインカスクフィニッシュなどの特殊な銘柄はこのラック式の熟成庫とは別の特別な場所にあるそうで、樽の99%はこうしたラック式熟成庫に保管されているとのことでした。

富士御殿場蒸溜所12年レッドワインカスク
富士御殿場蒸溜所12年レッドワインカスク

熟成庫の中心の通路にはコンベアがあり、この上を樽が運ばれていきます。ダンネージ式でない多くの蒸留所は、こうして樽を運ぶのでしょうね。

樽を運ぶコンベア。熟成庫の入り口にあったクレ556スプレーで、きちんとメンテナンスされているはず
樽を運ぶコンベア。熟成庫の入り口にあったクレ556スプレーで、きちんとメンテナンスされているはず

 

ここでもグレーンは60度ほど、モルトは50度ほどで樽詰めするという「こだわり」の説明があり、キリンウイスキー独自の特徴がここでも知られます。(ただ、グレーンのバレルエントリーは55度と以前にうかがった気がしますが。60度のものもあるのかもしれませんね。)

熟成庫の戻りには、マルチカラムとダブラー、ケトルがある場所を外から見られる場所で足を留めて写真撮影をする機会がありました。

右側にマルチカラム蒸留器、左側にダブラーとケトルがあるそう。
右側にマルチカラム蒸留器、左側にダブラーとケトルがあるそう。

右側の建物は、よく見ると窓からマルチカラムの塔が見えるそうです。このときは天気が悪くよく見えなかったのが残念です。

セミナールームに戻ると、素敵なおつまみとともに、マルチカラム、ケトル、タブラーそれぞれグレーン原酒ごとの違いがわかるテイスティングセミナーを受け、ここでも楽しい時間をすごしました。

富士御殿場のテイスティングキット。グレーンを複数種味わえるのは富士御殿場蒸溜所の強み。
富士御殿場のテイスティングキット。グレーンを複数種味わえるのは富士御殿場蒸溜所の強み。

おつまみも非常に美味しいです。

供されるおつまみ。チーズ味の柿の種がびっくりするほど美味しい。
供されるおつまみ。チーズ味の柿の種がびっくりするほど美味しい。

なお以下の空撮動画(公式動画と思われます)で、熟成庫の全景とおおよその位置がわかりますのでぜひ御覧ください。(素敵な動画なのに、公開から半年たっても閲覧回数が1000回に至ってない!みなさま奮って御覧ください。)

富士御殿場蒸溜所 熟成庫見学ツアーのまとめ

熟成庫はもちろんのこと、その道のりやテイスティングなど、幅広い楽しみがある熟成庫ツアーは、ここまで充実していてたったの1000円。

非定常開催ですので、もし枠を見つけたらすぐに申し込みされるのがおすすめです!

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