ニッカの初号銘柄。これを出荷したときの竹鶴とリタの心境はいかなるものだっただろう。

余市の「ウイスキー博物館」

余市の「ウイスキー博物館」とは

余市の「ウイスキー博物館」とは、北海道の余市蒸溜所内にあるウイスキーに関する博物館。ウイスキーだけでなく、ニッカウヰスキー竹鶴政孝に関する貴重な資料が数多く展示されています。

余市の「ウイスキー博物館」について

余市の「ウイスキー博物館」は、余市蒸溜所内に古くからある博物館です。貴重な展示が数多くあります。

ウイスキー博物館内のポットスチル。非常に小型のランタンヘッド。スコットランドのどこかのポットスチルらしいが、詳細は教えていただけなかった。
ウイスキー博物館内のポットスチル。非常に小型のランタンヘッド。スコットランドのどこかのポットスチルらしいが、詳細は教えていただけなかった。

まず圧倒されるのはポットスチル。どこの蒸溜所かはガイドさんに聞いても教えていただけませんでした。

竹鶴威氏の本に出てくる、スコットランドの人からお土産でもらった古い蒸溜器やスピリッツセーフなども展示されており、「おお、これがあのおみやげか!」と感嘆します。(写真は撮り損ねました)

一番のみどころ(?)は、ウイスキー博物館内に設置されている有料試飲所、「ウイスキー倶楽部」。ここでは、終売品を含めた貴重な銘柄が激安で試飲できます。行けばわかりますが、とにかく驚愕の値段設定です。たとえば、終売品のピュアモルト・ホワイトが200円で飲めるのです。おかしい。

余市蒸溜所内の有料試飲所。ものすごく安い価格で貴重な終売銘柄を試飲できる。
余市蒸溜所内の有料試飲所。ものすごく安い価格で貴重な終売銘柄を試飲できる。

ウイスキー博物館に来て驚いたのは、以前に東京で行われたブラックニッカ・フリージングハイボールのイベントで見た絵がバージョンアップされて展示されていること。

余市のウイスキー博物館に飾られた絵。筆者は制作過程を東京でも見ている。
余市のウイスキー博物館に飾られた絵。筆者は制作過程を東京でも見ている。

バージョンアップされているとはいえ、同じ絵を約1000km離れた場所で見るという、非常に珍しい経験をしました。ひとつ思うのは、竹鶴政孝はウイスキーをロックでは飲まなかったのでは…ということですが、まあ細かいことですね。そんな違和感を吹き飛ばす完成度がこの絵にはあると思います。

そして個人的に最も感動したのは、書類関係の展示。

余市蒸溜所の「ウイスキー博物館」に展示されている竹鶴ノート。
余市蒸溜所の「ウイスキー博物館」に展示されている竹鶴ノート。

特に、「竹鶴ノート」の現物と、J.A.ネトルトンの「ウイスキー並びに酒精製造法(The manufacture of Whisky and Plain Spirit)」の展示には衝撃が走りました。

余市蒸溜所に展示されている、『ウイスキー並びに酒精製造法』。竹鶴政孝は晩年までこの本を教科書とした。
余市蒸溜所に展示されている、『ウイスキー並びに酒精製造法』。竹鶴政孝は晩年までこの本を教科書とした。

これらの二冊は、ジャパニーズ・ウイスキーの誕生と成長をひたすらに支え続けた奇跡的な名著です。

いわばこれらは、大げさにいえば、キリスト教における、旧約聖書と新約聖書のようなものです。(筆者は、とくにキリスト教を贔屓しているわけではありません。念のため。)

『ウイスキー並びに酒精製造法』は竹鶴政孝の成長を支え、帰国後も長くウイスキー製造の教科書として重宝されました。竹鶴ノートは、『ウイスキー並びに酒精製造法』を解釈し、実践した記録です。

それに記載された知識をもとに山崎蒸溜所が生まれ、さらにそれを深化させ余市蒸溜所が生まれました。(さらに後年、竹鶴ノートをもとに岩井喜一郎本坊酒造でのウイスキー製造を実現させています。)

岩井喜一郎設計のポットスチル第一号と第二号。ストレートヘッド型、下向きラインアームでヘヴィな原酒を作った。
岩井喜一郎設計のポットスチル第一号と第二号。ストレートヘッド型、下向きラインアームでヘヴィな原酒を作った。特に奥の釜は、竹鶴ノートに記載された釜の形状と瓜二つであることがわかる。

旧約聖書をもとに実践的な知識を加えたイエス・キリストの記録が新約聖書であると考えると、両者には非常に共通点があると思います。

また竹鶴政孝は大阪高等工業学校で醸造学を学んでおり、当然ながら日本の醸造界にもたいへん明るく、特に同学の教授である坪井仙太郎博士を尊敬していましたが、その坪井博士の書籍もウイスキー博物館に展示されていました。

非常に見づらいが、「Beer and Wine by prof S. Tsuboi」とある。直訳すると「ビールとワイン 坪井仙太郎博士 著」
非常に見づらいが、「Beer and Wine by prof S. Tsuboi」とある。直訳すると「ビールとワイン 坪井仙太郎博士 著」

こういうところは、竹鶴政孝オタクか醸造業界の方にしかグッと来ない展示かもしれませんが、「マッサン」が好きで来た、といった方も純粋に楽しめる展示もしっかりとあります。

なんと、スコットランドのグラスゴー郊外のカーカンテロフにあったリタの実家を再現したエリアがあるのです。実物は落札、移設されているはずで、家があった場所は現在は単なる道路になっていますから、おそらく昔の写真から再現したレプリカなのでしょう。

リタの実家を再現したレプリカ。
リタの実家を再現したレプリカ。

このエリアをすぎると、山田町にあった竹鶴家の自宅の調度品の展示エリアに入ります。

竹鶴家に敷かれていた熊の毛皮。竹鶴自身が仕留めたと言われている。
竹鶴家に敷かれていた熊の毛皮。竹鶴自身が仕留めたと言われている。

ここでは、「あゆ見荘」のご主人から聞いた、「竹鶴家の玄関にあった恐ろしい熊の毛皮」もありました。現地で生々しい情報を仕入れてから、こうした資料館に来ると、また深く楽しめます。

写真でよく見るリタのメガネも展示。大事に使っていたことがメガネケースからもわかります。
写真でよく見るリタのメガネも展示。大事に使っていたことがメガネケースからもわかります。

このエリアをすぎると、またニッカウヰスキーの歴史コーナーにもどりますが、大日本果汁株式会社の色が濃い前半とことなり、立派なウイスキー会社としての博物館になります。

初号の「Rare Old Nikka」や、各種CMの放映など、非常に貴重なものが数多く見られます。

ニッカの初号銘柄。これを出荷したときの竹鶴とリタの心境はいかなるものだっただろう。
ニッカの初号銘柄。これを出荷したときの竹鶴とリタの心境はいかなるものだっただろう。

はっきりいって、貴重なものが多すぎて紹介しきれないので、少しでも興味が湧いた方は、ぜひこの余市蒸溜所内のウイスキー博物館に行くことをおすすめします。

余市の「ウイスキー博物館」への行き方

余市の「ウイスキー博物館」は、余市蒸溜所内にあります。余市蒸溜所は余市駅から降りてすぐ正門がありますから、歩いて数分です。つまり駅からすぐ行けます。余市蒸溜所に行ったら必ずじっくり時間をとって見てほしい素晴らしい場所です。とにかくおすすめ!

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